2020.06.29

ビジネス+ITにCEO徳岡の寄稿「ウィズコロナ時代の学びに必要なのは「3つの対話習慣」だ」が掲載されました

【メディア】ビジネス+IT 2020年6月28日

 

寄稿:ウィズコロナ時代の学びに必要なのは「3つの対話習慣」だ

 

https://www.sbbit.jp/article/cont1/38164

 

 

新型コロナにより私たちは、これまで信奉してきた「グローバリズム」とは真逆の生活を強いられている。グローバル化とはボーダーレス化でもあり、人々が自由に誰とでも交流し、知を創造する活動ができた。しかし今では各国は国境で分断され、組織もテレワークへ移行し社員は離れ離れ。ボーダーレス化が一気に「分断」へと突き進み、知の共創のカルチャーが途切れようとしている。そこで今私たちにできることは、知の共創のレベルを上げる準備をしておくことだ。ウィズコロナ時代にベースとなる力を磨き、ポストコロナ時代にリアルで再開した日には、1人ひとりが見違えるような知の持ち主になっている。そんな生き方への処方箋を探る。

ライフシフトCEO/多摩大学大学院教授・学長特別補佐 徳岡晃一郎

 

 

 

<目次>
  1. 想定外の災禍は今後も忘れたときに突然訪れる
  2. これから必要なのは“目的意識”と“変身力”
  3. 勉強としての「3つの対話習慣」

 

1.想定外の災禍は今後も忘れたときに突然訪れる

 今回のコロナ禍でわかった3つの真実がある。それは「想定外の3つの真実」と筆者が考えているもので、「どんな災禍が起こるかわからない。いつ起こるかもわからない。しかも災禍はすぐ忘れる」というものだ。これまでもSARSやリーマンショックなどの災禍が突然やってきたが、毎回驚き、毎回すぐ忘れてきたのが人間、特に日本人だ。

 だが、これから人生100年時代、80歳まで現役が必要な時代を生きるに当たり、この3つの真実を忘れてはならない。40歳の読者であれば、まだ後40年も現役でいないといけないが、その間に何度も想定外の災禍に見舞われる可能性がある。

 そんな、何が起こるかわからない将来においても自分を現役として80歳まで引っ張るためには、どんな想定外の災禍にも耐えられる底力をつけておくしかない。いつ起きても対応できる“変身力”も重要だ。そして長い人生の中で何度も遭遇するかもしれない災禍に対して、いちいちジタバタしないように経験を記憶しラーニングしておかなくてはならない。

 これはすなわち、自分の長い人生を積極的に作り込んでいく「ライフシフト」の発想法にほかならない。

 私たちはこれまで、人生を60歳定年までとし、会社のために長時間労働で懸命に働くことを基本にしてきた。会社が想定外の自体には対処してくれるという幻想のもとで。そんな生き方を変えて自分の人生のために仕事や会社を活用する生き方へシフトしなければならない。

 ウィズコロナ時代、それに続くポストコロナ時代においては、長期にわたって自分をベストの状態にキープし続ける基礎力を養っておくことが重要になるわけだ。

 筆者が関与しているライフシフト大学(ライフシフトを軸に、異業種の社会人が学び直しやキャリア構築を行う場)においても、コロナ環境下でも多くの社会人が入学している。皆、今への不安感を通り越した将来への危機感があるのだ。コロナになってその危機感が増幅されたのが、入学者との対話からよくわかる。どんな想定外がいつ起きるかわからない時代、かつ皆それを忘れてしまう社会において、自分の生き残りを賭けて勉強しているのだ。

 

2.これから必要なのは“目的意識”と“変身力”

 では一体何を学ぶべきか。ライフシフト大学では「目的意識」と「変身力」を大きなテーマとして掲げているが、これはウィズコロナ時代に読者の皆さんにも挑戦してもらいたいテーマだ。

 「目的意識」とは、自分のライフシフトビジョンの創造だ。

 自分はどんな人生を送りたいのか。ついに現役を引退するときになんと言われて惜しまれたいのか。それだけの価値を残せる自分にどうすればなれるのか……。そんな疑問を自問自答したり、異業種で年代も違う他者と熱く語り合ったりすることで、徐々に気づきを得ていくだろう。

 もちろんすぐ答えの出るものではないが、それゆえ、こうした自分に対しての本質的な問いから逃げずに常に向き合うことができる知的基礎体力のトレーニングを行うことが肝要だ。それが本稿後半で述べる「対話習慣」だ。

 「変身力」とは自己変革のための資産、“変身資産”を磨くことだ。変身資産は「オープンマインド」「知恵」「仲間」「評判」「健康」の5つからなる。

 

 

 5つの力は上記に示すとおりだが、これらについてはしっかりと自分の現在値を見つめることで、変身資産を吟味していくことが肝要だ。仕事の評価や振り返りは定期的にやるものの、本当に大切な自分の人生の振り返りはいつも後回しになってしまうものだ。そこでは次ページで紹介する「対話習慣」が効いてくる。

 イメージしやすいように、ライフシフト大学在籍の、大手製薬会社のバリバリの優秀な社員、40代のOさんの例を挙げよう。80歳まではまだ遠いOさんは、まず自分の子供が大学に入る時をひとつの区切りとして、そこで大きく飛躍できるように準備したいというライフシフトビジョンを持った。

 Oさんの変身資産としては「評判」が弱みであり、その要素として、自分オリジナルな価値と言えるものが弱い(彼は会社では優秀だが、会社の資産や看板を取ると何もない)ことに気づき、柱を作ることに今は集中している。会社にいるだけではそれができないことにも気づいている。

 このように、自分時間を持てるウィズコロナ時代とは、自分の「目的意識」と「変身力」の現在値を確認し、それらを高めるための勉強をスタートできる、ある意味で絶好の、「災い転じて福となす」機会なのではないだろうか。

筆者が関与しているライフシフト大学(ライフシフトを軸に、異業種の社会人が学び直しやキャリア構築を行う場)においても、コロナ環境下でも多くの社会人が入学している。皆、今への不安感を通り越した将来への危機感があるのだ。コロナになってその危機感が増幅されたのが、入学者との対話からよくわかる。どんな想定外がいつ起きるかわからない時代、かつ皆それを忘れてしまう社会において、自分の生き残りを賭けて勉強しているのだ。

 

3.これから勉強としての「3つの対話習慣」

 目的意識と変身力を磨くためにおすすめしたい知的基礎体力アップのトレーニングが、ライフシフト大学でも取り入れている対話習慣だ。対話習慣には3つの対話の相手がある。

(1)自分との対話
 これはセルフコーチングと筆者が名づけているMBB(思いのマネジメント、Management by Belief)の手法だが、毎日の出来事や出会い、気づきをそのまま放置するのではなく、自分の問題意識やマイテーマの観点から自己分析してみる手法だ。

 たとえば、「コロナへの安倍政権の対応」でもいいし、「メルケル首相のリーダーシップ」でもいい。自分が気になったことを取り上げ、「なぜ気になったのか」「どういう本質的な問題があると思うのか」「自分ならどうするか」などを自問自答し、1000字程度で記述する。

(2)親友との対話
 自分のライフシフトビジョンなど、パーソナルなことを話せる友のことを親友あるいは心友という。自分のキャリアの方向性など立ち入ったことを話すので、同じ会社の中では無理かもしれない。ぜひ異業種の仲間との交流の場を作り、語り合える親友を見つけてほしい。互いに変身資産の状況を共有し、アドバイスし合うのも重要だ。オンラインで時間がフレキシブルになったおかげでかえって親友と濃密な時間を持てることを利用してはいかがだろうか。

(3)本との対話
 これは本を読んで書評を書く勉強法だ。歴史物、経営書、古典文学などジャンルはなんでもいいのだが、深い研究や人間描写に基づく骨太な主張があるものがいい。時流を捉えただけのものやノウハウ本、タイトルだけの“なんちゃって本”は適さない。

 骨太な本をしっかり腰を据えて読めるのもウィズコロナの恩典だろう。そういう本を読んで自分が何を考え、またこれまでの自分の問題意識をどう発展させたかを1000字程度で記述するのだ。変身資産の「知恵」はもちろんのこと、「評判」を形成する「独自コンテンツ」はこの対話でこそ磨かれる。これは作品に込められた著者の思いからインスパイアされ、自らのオリジナルな知を創造するのにとても有効だ。

 このような手段を駆使することで、自分の問題意識や目的意識が鮮明になっていくし、また自分が書いたり、話したりする際に、自分の知識の深さや広がりのなさに気づくはずだ。ノウハウ本に飛びつかず、まずはしっかりとポストコロナを見据えて、3つの対話で自分の足元を固め自分力を高める勉強をスタートさせてほしい。