日経新聞電子版にCEO徳岡のコメントが掲載されました 東芝社長の「心理的安全性」 忖度がしぼませる血気
【メディア】日本経済新聞(電子版) 2021年9月13日
東芝社長の「心理的安全性」 忖度がしぼませる血気
本社コメンテーター 中山淳史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD090ZW0Z00C21A9000000/
[引用紹介]
結局、トップのリーダーシップに問題はある。前に進めないのは複雑な状況下でアニマルスピリットの源となる何かが社長と取締役会議長を兼ねる綱川氏に欠けるせいだ。それは「心理的安全性」ではないかと筆者は考える。
心理的安全性はここ数年で広まった言葉で、本来は上司と社員に生じがちな問題の根源を指す。米グーグルが2012年に実施した調査が有名で、社員が思ったことを「言えない」「できない」空気がある組織では働きがいを感じることができず、生産性も悪い。その結果、技術革新が生まれにくくなる、というものだ。
学術的にそれを証明し、世界に広めた米ハーバード・ビジネス・スクールのエイミー・エドモンドソン教授の著書「恐れのない組織」によれば、それは監督官庁と企業、株主と経営者などの関係にも言えることだという。
圧力が一方的にかかる状態には上下関係のほかに「情報を多く持つ・持たない」の差である知識の非対称性や、利害関係者と経営者の力の不均衡がある。要はそういう状況下で本来あるべきこと、なすべきことを考えなくさせるのが「心理的安全性を欠く関係」だ。
東芝の場合は後者に相当し、経営者は「総会がまた混乱する」「退任に追い込まれる」という恐怖を過剰に感じ、長期の課題より目先の案件に目を向ける短期主義に陥っていく。できるだけ波風を立てずに済む「イージーセッティング」と言われる問題に力と時間を割くようになるわけだ。
そうした状況では長期視点の経営が進めにくい。ただし、それは物言う株主が悪いということではなく、企業が株主と正しい関係を築けていないせいだ。
多摩大学大学院の徳岡晃一郎教授(組織論)は「心理的安全性は自ら獲得しにいかないといけないもの」と話す。波風を立てない経営より、「厳しい株主を魅了し、熱狂させる将来像を示すこと。またはそれができる経営者を連れてくることが重要」と見る。