【連載シリーズ】大人の学びコラム 第二回「シニアこそイノベーターである」の論
さてさてお待ちかね。
ライフシフトならではの視点でシニア人材活躍の定式と常識を斬るシリーズ第二弾です。
今回も「寄らば斬る!」。名刀LS剣が怪しくにぶく光を放ちます。
いざ、ご覚悟あれ(ウソです楽しく考えていきましょう)。
イノベーションとは何か?
これは著名なシュンペーター先生以来の深淵なる問いです。
わたくしめが思いますに、「技術」についてのイノベーションで、純粋な研究開発の成果から一段階段を上り、
新しいビジネスにつなげるには、多くの場合ある種の「出会い」のステップが必要です。
すくなくともイノベーションの多くはなんらかの「出会い」なしには「新技術」のまま終わってしまう宿命にあります。
最初から用途を想定した研究開発ももちろん大切ですが、小さくまとまってしまう傾向が強い。
一方、純粋なる知的興味に導かれたR&Dの成果は、そのままお蔵入りになる可能性も、大きなビジネスを生む可能性も五分五分です。
具体的なお話を二つご披露申し上げます。
くしくも一つ目は「光」です。
LED光源から発せられる光形を自在にコントロールできる技術を開発したあるベンチャー企業さん。
若い社長さんとお話したのですが、技術は画期的で特許も取得されています。
ただ何に困ったかというと、用途です。
技術開発には成功したが、ビジネスにつながらない。
要すればお客様がいない。資金繰りも窮してくる。
LEDライトの光を、メビウスの輪にするのも、四角にするのも、波形にするのも変幻自在。
なのに・・・。
社長さんも用途について熟考し続けたのですが決定打に欠ける。
しかし、最終的にはブレークスルーが起こり大型受注につなげることができました。
さて、どんな用途だったか想像できますか?
これがなんととっても意外な用途なのです。
答えは「工場用フォークリフト」!
工場は騒音に包まれているので、フォークリフトが近づいてくることに気づかずに、
フォークリフトと工員さんの接触事故が頻繁に起こるそうなのです。
しかし、フォークリフトとともに鮮やかなLEDライトが進行方向のフロアに向けて形を変え照らし出しながら動いていくと、
「あ、フォークリフトが近づいてきた」と、どんなに騒々しい工場現場でも誰でも気づくというのです。
そう、光のイノベーションは工場の安全保安のニーズと「出会う」ことで大きなビジネスに化けたのです。
実際、ある大手自動車メーカーではすべてのフォークリフトにこの技術が採用され、
それをきっかけにこのベンチャー企業さんも急成長を実現しました。
もう一つ簡単に具体例をご紹介しましょう。ある会社がある塗料の開発に成功します。
この塗料、モノに塗ると表面がツルッツルになり接触抵抗が大きく下がります。
さて、問題は・・・。
もちろん同じです。用途、用途、用途!
この新技術を必要とするお客様が現れない。
最終的にこの画期的な塗料は洗濯機に活用され日の目を見ます。
洗濯機の排水パイプに塗ることで排水時間が大幅に短縮されたのです。
さて、ある意味この二つのイノベーションの事例に共通することは・・・。
技術をビジネスイノベーションにした「出会い」は、経験に基づく問題意識と培われた人脈がもたらしたものなのです。
そう、もうお分かりですよね。シニア人材が鍵を握ったのです。
「ああ、この技術だったらあの会社の○○さんが困っていたあの課題を解決できるはずだ」
「まてよ、同期の工場長の○○がこぼしてたな・・・」などなど。
イノベーションをイノベーションたらしめたのはシニア人材だったのです。
新技術とビジネスニーズをつなげるかどうか、実は多くの企業に共通する課題です。
そしてシニアの目がキラリと光るとき、その課題が克服されるのです。
新塗料を開発した企業のシニアであり、洗濯機メーカーのシニア、工場保安担当のベテラン。
これらの方々がつながって双方の会社でイノベーションを実現したのです。
イノベーションは「若い人」しかできない。筋違いな論です。
もしかしたら最先端のIT技術の開発自体はそうかもしれない。
そこで作り出されているのはあくまで潜在性です。
潜在性をお客様や社会に役立つよう顕在化するには
経験に基づく直観、広い人脈と視野、そして熟考する能力と人を率いる能力、人の総合力が問われます。
だからわたくしは申し上げたい。
シニアこそイノベーターである。
シニアの活躍なしにイノベーションなし。
もし、いささかでも疑念を持たれるなら是非現場で起きているイノベーションの過程をつぶさにご覧ください。
もしかしたらシニアは華やかなスポットライトを浴びていないかもしれない。
しかし、その場合でもシニアはイノベーションを実現させた縁の下の力持ちなのです。
シニア=イノベーター
恒等式です。単語カードにして憶えておきましょう。
では、また次回。