JXTGエネルギー株式会社 様 【 エネルギー 】

旧一般職女性社員のキャリアへの意欲を高め
個人の成長と会社への貢献につなげる

人事部 副部長 宮崎 仁志 様 / 人事部 ダイバーシティ推進グループ 企画チームリーダー 永田 朝子 様

企業プロフィール

2017年、JXホールディングス株式会社と東燃ゼネラル石油株式会社と経営統合し、JXTGホールディングス株式会社に商号変更。JXTGエネルギーはその中核事業会社として、ENEOSブランドで知られる石油精製販売業などを展開。国際的な競争力を有するアジア有数の総合エネルギー・資源・素材企業グループへの発展を目指している。

「人生100年時代」を掲げて
旧一般職女性社員の意識改革を目指す

【徳岡】 弊社が支援した「人生100年時代のキャリア開発研修」を実施された背景をお聞かせください。

【宮崎】 当社グループでは、経営統合以前に総合職と一般職に分けて採用していた時代がありました。最後の一般職採用は2008年で、それ以降は全ての女性社員が総合職として一本化されており、かつて一般職だった女性社員も、少なくとも10年以上は総合職としてのキャリアを歩んできています。しかし現実には、転勤などを繰り返しながら昇格していく者がいる一方で、1つの職場で長く働いてきたために、その職場のエキスパートのような存在のままで留まっている社員も少なくありませんでした。

 そんな中、20187月にJXTGエネルギーの大田社長が「いきいきと働ける会社づくりに向けて」、更にダイバーシティ推進の一環として20193月に「今後の女性活躍推進について」というメッセージを発信しました。その背景の1つに、旧一般職の女性社員に能力を発揮する機会が与えられていないのではないか、という懸念がありました。事前に実施した全社員へのアンケートで、女性社員の中に、仕事や昇格のチャンスが与えられていない、キャリア支援を受けてこなかったと感じている層があることがわかったからです。

 そこで、旧一般職の女性社員、約400名を対象に、自身の意識を変えて、モチベーションを高めていけるような研修を行うことにしました。対象者は4050代のシニア層が中心になります。会社員人生がまだ20年以上残っている女性社員の皆さんに、仕事への意欲を高めてもらうことで、自分の人生を充実させてほしいという思いと、さらに高度な仕事をして会社に貢献してほしいという思いの両方があります。

【徳岡】 研修に「人生100年時代」という冠がついているところがいいですよね。会社の中で充実した仕事生活を送っていれば、人生は当然充実しますし、人生100年を視野に入れることで、自分の今後のキャリアをしっかりと考えないといけないという気持ちになってきます。

【宮崎】 それは正直、徳岡先生に教えられたところです。我々としては既に総合職として活躍している方々に対するこの研修を「旧一般職研修」と言いたくはありませんでした。

【永田】 ただ単に「キャリア開発研修」だとちょっと堅苦しいですが、「人生100年時代の」とつけることで印象を和らげる効果があり、また、御社の講義とは別に「女性の心と体の健康」という講義パートを自社健康推進グループが併せて行い、仕事だけではなく、広い意味で今後の会社人生を充実させ、いきいきと働くためにどうすればいいか?ということを一緒に考える機会にできればよいと考えました。

人事部副部長
宮崎仁志様

研修によって芽生えたポジティブな思いを
上司が受け止める仕掛けを用意

【徳岡】 研修では、人生100年、現役80歳の時代に向けて、自分自身の価値を常にアップデートしていくことの重要性について解説し、そのベースとなる自分の思いや強みを確認した上で、「未来の自分づくり」や「次の3年ビジョン」などのワークを行いました。受講者の皆さんの反響はいかがでしたか。

【宮崎】 研修後にアンケートをとったところ、受講者の大半が「研修内容が良かった」とポジティブに評価していました。さらに、「やりがいのある仕事にチャレンジしたい」という参加者が4割程度に、「昇格したい」という参加者がそれぞれ約7割程度になり、受講前よりそれぞれ1割程度増加しました。この割合が高いか低いかはなんとも言えませんが、全体としては、受講者に良い刺激を与えることができたと感じています。

 ただ、本人たちがいくらポジティブな思いを抱いて帰っても、職場が同じでは変わりません。上司が本人の思いをしっかりと受け止めて引き上げてあげないと、その思いは多分すぐに消えてしまうと思いますので、上司がチャレンジの機会を与えて、その結果を正しく評価することが重要になってきます。そこで、上司側には「偏見なく、さらなるチャレンジの場を与えてほしい」というメッセージを伝えるeラーニングを実施するとともに、上司と部下がキャリアについて話し合う自己申告面接の場で、研修を受けての思いを受け止めて話し合ってもらうような仕掛けを用意しました。

【徳岡】 研修では上司の皆さんにも、部下である受講者の皆さんへのレターを書いていただきましたが、「自分たちも何かしないといけない」という感じにはなっているのでしょうか。

【宮崎】 はい。あのレターは、上司が自分の役割を振り返って考える非常に良い機会になったと思います。受講者の中には異動を希望したり「社内FA(フリーエージェント)制度」を活用したりする者もいますので、会社としてぜひ新たな仕事にチャレンジしたいという気持ちを実現させ、成果を出してもらえるようなサイクルにしていきたいと考えています。

【徳岡】 3年後のビジョンを考えるところでは、皆さん「仕事をこう変えたい」とか「こういうテーマに取り組みたい」など、かなり具体的に書かれていましたので、「変わらなくてはいけない」という会社からのメッセージがしっかりと伝わったのではないかと感じました。

【宮崎】 そうですね。参加者は各職場のエキスパートですから、その仕事には誰よりも詳しいのです。ですから、どこがうまくいっていないのかということを本当はわかっているのですが、これまでは、それを表現するスキルや、それに取り組んだら面白いと思える意識が少し弱かった、あるいは機会や期待を十分に与えられなかったのだと思います。そんな中で会社は「変革と挑戦」をスローガンに掲げていますが、何をどうすればいいのか具体的にわからなかったのではないでしょうか。それが、研修を受けたことによって、「ああ、自分にできるのはこの部分だ」と気づけたり、言葉にすることができたりしたのだと思います。さらに、それぞれの考えをみんなでディスカッションして練ったことによって、研修当日の提案のクオリティもこれまでにない高さになったと思います。

【徳岡】 そうですね。発表した内容に対して、みんなでさらに高め合うようなディスカッションが素晴らしかったですね。

人事部ダイバーシティ推進グループ企画チームリーダー
永田朝子様

シニア社員に会社の今後の道筋を示し
彼らのモチベーションに火をつけたい

【徳岡】 今後の展望についてお聞かせください。

【宮崎】 研修後のアンケートでは、「男性社員も受けた方がいい」という声が非常に多く寄せられました。恐らく、多くの受講者がマインドチェンジを実感できたからでしょう。研修を見学していた私自身もそう思いました。特にバブル期に入社した50歳前後の世代が、その後の会社人生をどのように生きていくのか、どうやって存在観を示して、会社に貢献して、自分もやりがいを感じていくか、というテーマは大事だと感じています。

【徳岡】 男性もポストオフで給料が下がると、モチベーションを下げてしまう人が少なくありませんからね。

【宮崎】 私も同世代なのでよくわかるのですが、50歳くらいまでは頑張るものの、そこから先は、何となく自分なりの着地点を見定めてしまう。会社としては、そのタイミングで、もう一度ロケットに火をつけてあげたいと思います。

【徳岡】 着地点をもっと遠くに、ということですね。

【宮崎】 会社としては、ただ研修をやって意識改革をすればいいというだけのものではなく、男性社員自身の処遇・配置にも関わってきますから、難しいテーマではあります。

【徳岡】 シニア層の活躍は、企業が今後どういう軸足でビジネスをしていくかと表裏一体です。シニア層の活躍の場をどこにするのかの前提として、そもそも企業が何で勝負していくのかが重要です。それによって、どこにどのような役割が必要になってくるかで、シニア層の活躍できる場所も定まってきます。

【宮崎】 そうですね。シニア層を活用しなければいけないからやるのではなく、この人たちだからこそ何か価値が創造できるような、前向きなものでなければいけないと思っています。

【徳岡】 「シニア資産」という言葉がありますが、時代が変われば事業も変わりますから、その資産はそのままでは使えないかもしれません。会社が戦略として描く新たな事業展開に合わせて、彼らのノウハウや知識をどう磨き込んでいくかが重要になります。

【宮崎】 会社としてそのような道筋が見えた時に、今回のような研修を実施して彼らに“着火”できると、良い方向に進めるような気がします。そういう前向きなストーリーを作らなければ、本人も納得できないし、会社全体も納得して進めませんから。

【徳岡】 シニア資産をうまく活用できれば、もっと先まで活躍することができる。その見通しをどうやって示せるかだと思います。それによって、シニア層が「それならやらなくちゃ」「あと15年、それにかけてみようか」という思いを持てると、とても良いと思います。

これからの人事施策を考える上で重要な
3つのキーワード

【永田】 研修で紹介いただいた「人生のアップデート」というキーワードは、どの世代にも当てはまると感じました。これまでは会社がキャリアを与えてくれましたが、これからは自分で切り拓いていかないといけないので、まさに自分で自分をアップデートしていくことが必要だと感じています。

【徳岡】 ある調査によると、今、働き方改革で残業時間がどんどん減っている一方で、自己啓発に当てている時間は年間5時間程度しか増えていないとのことです。働き方改革を自己投資に振り向けることができていないわけです。その背景には3つの要因があると考えています。

 1つは「自分がこうしたいからする」という内因的モチベーションが低いことです。日本の会社員はこれまで、給料や出世といった外因的モチベーションにずっと引っ張られてきたので、本当に自分が何をやりたいのか、あまり考えてこなかった人が多い。ところが、50代を過ぎるとポストオフなどで外因的モチベーションがなくなってしまうので、それに頼って生きてきた人はモチベーションを失ってしまうわけです。

 2つめは、外を知らないことです。ずっと同じ会社で働く人が多いので、会社の中でうまくやれていればいいと思って安心してしまい、自分の本当の価値がわからなくなり、勉強不足になってしまう。

 そして3つめは、一般的な知識への無関心です。これまでは三現主義(現場・現物・現実)と言われてきましたが、それは社内の暗黙知さえ蓄えれば仕事ができていた時代の話です。グローバル化した今後は、それに加えて原理・原則・原点が必要だと思います。それは言い換えれば、教養や科学的知識といった普遍的な知識です。グローバルに事業を展開したり、新たな事業を起こしたりには、会社固有の知識だけでは不可能です。

 この3つの重要性になるべく若い段階から気づかせていくことが、これからの人事にとって重要な課題ではないかと思います。

【宮崎】 人事として今後の施策を考えていくうえで、すごく良いキーワードだと思います。例えば、内因的モチベーションについては、これまでの社内出世競争的なものを自己実現や成長の機会を与えることに変えていく。外を知るためには、どのような機会をつくっていけばよいか。もしかしたら副業もその一つかもしれません。原理・原則・原点については、本質的なことを議論するような場をどうやって提供するか。この3つは全てつながっている感じがしますね。

【徳岡】 そうなんです。それらが結びつくことによって、社員個々の自律的なキャリア形成につながっていくと思います。

【宮崎】 德岡先生には、受講者だけではなく、人事担当である我々にもいろいろな気づきを与えていただきました。これからも、このようなディスカッションをさせていただきたいと思っています。

【徳岡】 私たちも引き続き、貴社の活性化につながるような支援をさせていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

ご登場いただいた方々の所属や肩書きなどは取材当時のものです:このインタビューは2019年10月に実施いたしました。